凡人は筆を選ぶ


近藤工芸の塗装では「筆」の出番が意外と多い。一枚板の場合なら奥まった所とか細部の補修などに使うし、表札や看板描きには筆がないと始まらない。修理した家具などのリタッチにも使う結構な働きものなのだ。筆は大変種類が多く、またメーカー間の品質の差が大きい。特に面相筆はそうだ。よく選ぶ必要があるのだ。僕が最近使ってみて調子いいと思うのはプラ模型用の筆だ。ナイロン筆だが溶剤に対して強いし、穂先のまとまりも割りとよく、値段も手頃で気に入っている。あとトールペイント用の筆にも使いよさそうなのがある。ところでこうして筆について考察してみると、筆という道具は実に1000年以上もその姿を変えることなく人々に使われ続けてきたスーパースツールなのだと気づくのだ。もし筆がなければ世の中どうなっていたかわからない。ことわざに「弘法は筆を選ばず」とあるが、僕たちは天才ではない。凡人である僕たちはしっかりといいツールを選び、気持ちよく仕事をするべきなのだ。          -END-

                         職人 定成

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